秋田県農山漁村プロデューサー養成講座「AKITA RISE」

AKITA RISE 2024 入門編①パネルディスカッション

「秋田を農でオモシロくする!」

基調講演を行ってくださった株式会社雨風太陽の代表取締役・髙橋博之さんと、北秋田市で地域づくりを行っている一般社団法人大阿仁ワーキングの佐々木宗純さん、にかほ市の佐藤勘六商店で酒類販売のほか、いちじくの加工品を製造・販売し、地域をいちじくの産地化するために奔走した佐藤玲さんの3名でパネルディスカッションが行われました。

1.壁にぶつかったとき、「地域」と「人」とどう繋がっていった?

佐々木宗純さん(以下佐々木):壁を壁と思っていないのかもしれません。交渉してノーと言われたら、プランBに切り替える。僕にとって消防団は地域とのタッチポイントになっているんですが、地域の人とのオプションを増やしていくと、壁にぶつかっても新たな選択肢が生まれると感じています。よく「地域に足を引っ張られたりするでしょ?」と言われることがありますが、今のところ思ったことがないですね(笑)。

佐藤玲さん(以下佐藤):人と人とのことなので、毎回悩むことですね。正解はおそらくないと思うんですが、ひとつ思うのは、人が大勢いれば触れないように避ければ済むかもしれないけど、地域は人が少なくなり、避けられない。また会うんです(笑)。なので、ぶつかりそうだったら少しずらすかなぁ。別の機会でまた融和を図ります。限られた人たちのなかで、いろいろなことをやらなければならないけど、軋轢が生まれそうだったら時間を置いたりしますね。

司会:連携を図るという部分では?

佐藤:面白そうなことをやっていれば、人が集まるだろう。そのうちお金のことが付いてくる。農山村漁港課さんにもアドバイスをもらったこともあります。続けることで自然と連携が取れていくようになると思います。

佐々木:髙橋さんに質問なのですが、ポケットマルシェ(髙橋さんが手掛ける事業)ではさまざまな生産者の方とやりとりされると思います。地域に入り込んで交渉するとき、苦労されたのではと思いますが、いかがですか?

髙橋博之さん(以下髙橋):そんなに大変じゃないですよ。ただ、ポケットマルシェに参加してもらうために全国を8周して、あちこちでお酒飲んで二日酔いになって、翌日畑に行ったり、船に乗ったり…。ポケットマルシェよりも、議員になろうとしたときのほうが大変でした。若いときは食って掛かって喧嘩になり、ビールを掛けられたり…。でもそんなときも、大事なのは翌日謝ること。何を喋るかではなくて、誰が喋るかだなと思います。「博之だったら、聞いてやるか」という関係性を作ることが大事。地域に入っていくということは、相手を理解することが必要。大変なことだと思います。

2.情熱(=ワクワク感)を絶やさず、前を向いてこられたのは?

佐々木:僕はずっとサラリーマンとかパートをしながら、地域づくりに取り組んできました。他に生活を支える軸があったので、地域づくりについては好きなことをやってきたと思います。なので純粋に面白さが原動力。まれに、怒りが原動力になることもあります。みんなが見過ごしている「ボロボロの駅舎」があって、それを漬物加工所にするなんて普通なら思いつかないと思います。一緒にやってくれる人が先陣を切って、アイデアを出してくれる。一緒にやれば面白いだろうな、見たことのない景色を見られるだろうなという気持ちがあります。

佐藤:僕の場合、実家が「佐藤勘六商店」という酒屋ですが、継ぐことになったころは廃業同然で、追い詰められました。悲観的だったし、否定的でした。うちが商材としているものは「日本酒」と「いちじく」で、いずれも嗜好品。それを好きな人がターゲットです。少しずつ、僕自身の自己肯定感を応援してくれる人が出てきて、喜んでくれる人が増えていったことが理由かもしれません。いちじくは、私が住む集落では70年くらい前からやっている、歴史がある。集落にとっては自慢でもある。だからそれを喜んでくれるとうれしい。日本酒も、自分が良いと思うもの、美味しいと思うものをお勧めするんです。良いと思ったものを、人に勧めたくなる性分なんです。今思えば、小さい成功で調子に乗ったんですね(笑)

佐々木:自己肯定感を上げてくれるのは原動力になりますよね。

髙橋:日本って子どものころから「ちゃんとしろ」って育てますよね。そもそも、ちゃんとするって何だ? と思うんです。佐々木さんも、佐藤さんも、ちゃんと心の動きに正直に生きている。
「ちゃんとしろ」と情熱は別のもの。いつ死ぬかわからないじゃない? やらなかったことを公開して死ぬのは怖いから、恐怖から逃れるためには後悔しないように、正直に生きる。やりたいことをやりたいように、表に出すことが大切だと思います。

3.「農山漁村の資源」を切り口に秋田で「暮らし」と「商い」が豊かになるには?

佐々木:農山漁村の資源は無限にある。暮らしを豊かにする、という「豊か」というのが定義することが難しいなと思うんです。僕の豊かさで言うと、最終的には大金持ちじゃなくていい。
レモンサワーを飲んで、音楽を聞きながら友だちと話しているときが幸せ。
今、里山といわれる地域に住んでいますが、近所のおばあちゃんに作物をいただき、お返しに何か作業をして、仕事をして、空いた時間でのんびり過ごす。暮らしは自分の幸せ、欲と付き合うものだと思います。

佐藤:佐々木さんのおっしゃるとおりだと思います。今すでに豊かだと思う。自分の集落も、皆さんが住んでいるところも。奥ゆかしいがゆえに、言語化しないという部分もある。言語化しないと立ち行かないんだよ、と伝えたいです。アップデート、という表現では年配の方に理解できないでしょうから、認めてあげるというか。
集落の風土を知ること、それを肯定すること。お年寄りも昔のことを話すの好きだと思うし、それを知りたいし、色んな方に聞かせたい。もっと人を呼んできていいですか?って言いたい。ただ、そういうことに対して、お金をもらうということに引け目があるんだとは思います。でも資本主義だし、もっとみんなが良いと思ってくれているんだからと伝えたいですね。

髙橋:東北の人は奥ゆかしいと思う。自分の意思を言わないし、自然が厳しいところだから、俺が俺がっていうタイプの人はみんな都会へ出ていった。残った人たちは、意思を表現せず、みんなでチカラを合わせて生きてきた。その結果、風前の灯火。集落は続かない。
だから上の世代の人たちは「こんなところ、なにもないから」って言いますよね。それは仕方ないんです。彼らは悪くないんです。ただ、この集落を維持管理していく必要がある。だから、この維持管理費としてお金を受け取りましょうって理解して貰う必要があるんだと思います。
秋田市や盛岡市は、一流の都会にはなれない。一流の都会に唯一持っている優位性は、二流の都会なりに一流の田舎が近くにあることです。もっと連携を県内で取りましょう。それが、集落という宝を維持して、管理するためのビジネスなんです。

ご参加申込はこちらから